天秤課題における小学生の科学的推論過程の発達
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概要
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本研究の目的は, 二重空間探索としての科学的発見モデル (Klahr & Dunbar, 1988) に基づいて, 子どもの科学的推論過程の発達を詳細に検討することである。30名の被験者 (小学校4〜6年生) は, 天秤の動きについて, 彼らの仮説を尋ねられ, さらにその後, 実験セッションで12問のフィードバック課題を呈示された。各実験において, 被験者は課題の結果を予測し, その理由を述べるように指示された。また.結果を見た後にその結果を解釈するように教示された。プロトコルを基に, 被験者が, どのように問題空間を探索しているかが分析された。その結果, 以下のことが明らかになった。第1に, 被験者の多くは, 仮説・実験空間を頻繁に探索していた。第2に, 6年生は実験過程の前半において頻繁に空間移行を示し, 4, 5年生では後半において頻繁に空間移行を示した。第3に, 課題のフィード・バックを, 既有仮説を用いて解釈する傾向が4〜5年生において上昇するのに対して, 6年生では, その傾向が減少するという, 学年差が見られた。第4に, 実験結果から, 新たな情報を引き出そうとする時, 4年生は不明確な仮説を示すことが多く, それに対し, 6年生は明確な仮説を引き出すことが多いという学年差が見られた。本研究では, これらの学年差は, 二重空間探索としての科学的発見モデルにおける, 認知発達的差異という観点から考察された。
- 日本発達心理学会の論文
- 1993-07-10