日・韓高校生における無気力傾向に関する比較研究 : 進路発達との関連に注目して
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概要
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本研究の目的は,無気力傾向と進学動機の不明確性,進路未決定および自我同一性との因果関係を通じて,日本と韓国の高校生における無気力傾向に見られる違いを比較・考察することにある。日本の東京都内の高校生(男子164名,女子146名),韓国のソウルおよび京畿道内の高校生(男子124名,女子128名)を対象に,質問紙法による調査を行なった。無気力傾向尺度は2因子を抽出し,アンヘドニアおよび未来へ対する自己不破実感を表す'自己不全感'と対人関係における消極的または受動的な態度を表す'消極・受動'となった。本研究の分析は,国と性によって4つの母集団に分けて行なったが,国より性による違いがより明瞭となっていた。男子高校生の自己不全感は進路が決定していないために引き起こされることが推測された。しかし,女子高校生の方は,進路を決定しているためにかえって自己不全感が高くなる可能性が推測された。一方,消極・受動は,自我同一性の未確立問題によって影響されており,特に男子高校生の方が高かった。男女とも進学動機が不明確であることによって進路を決めるのが困難となる可能性が推測され,進路決定について感じる困難は,続いて自己不全感に影響を与えていた。国による差において,自己不全感が自我同一性によって直接的に規定される程度は,日本の男子高校生においてほとんど意味を持たないのに比べて,韓国の男子高校生の方はより高い係数で規定されていた。一方,女子高校生の場合,消極および受動的な性向が自我同一性の未確立によって影響される程度において,日本の女子高校生の方が韓国の女子高校生に比べて明瞭に高かった。また,日本の女子高校生の自己不全感は,韓国の女子高校生に比べて進語末決定の問題を介する傾向が示された。本研究において,日・韓男女高校生とも自己不全感に進学動機不明確性が影響していることが確認されたことは,いままでの知見を一歩進めたものとなる。
- 2004-12-20