児童期抑うつの特徴に関する一考察 : 攻撃性を手がかりに
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概要
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本研究では, 児童期抑うつの特徴をより明確にするため, 成人の抑うつに比し特異的とされる"攻撃性"に注目し, 児童 (小学3〜6年生) とその保護者をペアにして調査した。具体的には, 子どもには自己報告形式の抑うつ尺度と, 攻撃性の特徴を見るP-Fスタディを, 保護者には (予どもの) 気質尺度を実施した。次に, 抑うつ尺度をもとに子どもを2群 (高抑うつ傾向群と低抑うつ傾向群) に分け, 各々に保護者報告により得られた気質 (内向気質か外向気質か) を付与した後, P-Fスタディで得られた各評点因子につき分散分析を行った。気質と攻撃性については, 有意な結果は得られなかったが, 抑うつと攻撃性については興味ある結果が得られた。すなわち, 抑うつ傾向の高い児童の方が他者に対する攻撃性が高く, 自己に対する攻撃性が低かったのである。この時期の子どもにとって, 抑うつの低さは内省力を促し, 攻撃性も他者より自己に向かう傾向に結びつくが, 抑うつ傾向の高い子どもでは, 攻撃性が未熟な形で他者に向かい, 自分自身に目が向きにくくなるという特徴が見られた。成人の抑うつが過度の内省や罪悪感を特徴とするのに対し, 児童期の抑うつは, 目常場面での他者への高い攻撃性を特徴としていることが明らかになった。
- 日本発達心理学会の論文
- 2000-06-30