S-3 3. セルソーター(FACS)によるリンパ球の分離と測定
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概要
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免疫反応に関与するリンパ球の機能的な多様性を, リンパ球表面マーカーや, それに対する抗体を使用して分類する試みがさかんに行なわれている。FACSは, 蛍光標識した抗体を利用してリンパ球を生きたまま分離することができるので, 細胞免疫学, 免疫遺伝学等にきわめて有用な手段を提供するものと考えられる。ここでは主にFACSを利用して究明されているリンパ球の分化機構, 機能的分類, また最近おこなっているヒトのリンパ球のSubpopulationの分析などに焦点をあてて論じたい。一般にT細胞とB細胞の相互作用は, 抗体産生にとって不可欠のものである。B細胞は分化成熟後, 抗体産生細胞へと分化して抗体を産生するという免疫学的には単純な機能しかもちあわせない。しかし, T細胞はそれ自身は抗体を産生しないが, B細胞の抗体産生をネガティブにもポジティブにも調節するという複雑な働きを担っている。そのほか分化したT細胞には遅延型免疫反応や細胞障害性の作用など種々の免疫学的機能があることが知られている。たとえばFcリセプター(FcR)をマーカーとしてT細胞を2種に分類してその機能をしらべてみると, 抗体産生のヘルパー作用をもつ細胞はFcR^-の細胞で, 細胞障害性のT細胞はFcR^+のT細胞に属していることがわかった。またFACSを利用してT細胞のmitogenであるConcanavalin Aに対してFcR^+のT細胞はよく反応するが, FcR^-のT細胞は反応性が低いことなどが容易にしらべられるようになった。その他のT細胞表面の遺伝子産物に対する抗体を利用して, 抑制性T細胞の作用機序, 分化過程の解明などにも利用されている。最近われわれは, マウスのリンパ球subset, subpopulationの分析から得られた知識をもとにヒトのリンパ球, とくにT細胞のsubpopulationの分析を試みている。前述のFcリセプター以外のマーカーとして, ヒトの脳を免疫して作製したT細胞と反応する抗体(anti-brain associated T cell antigen ; anti-BAT), また自己免疫疾患のヒトから得られるT細胞と反応する抗体(natural thymocytotoxic autoantibody ; NTA)を利用して, T細胞をその機能的subpopulationに分類する試みを紹介したい。
- 1978-11-01