S-1 1. 新鮮伸展標本を用いたx線微小分析
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概要
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微細構造での元素の分布は従来の方法で観察された超構造の機能を化学的に解明する上で重要な意義をもち特に電解算元素や重金属元素の細胞内外の分布に関して強い関心が持たれている。この目的にはX線微小分析が広く用いられており, 定性的分析のみならず定量的分析も試みられている。しかしこれらの元素の多くは可溶性で従来の標本作製法では操作中に流失ないし位置移動を起し, 生体内での分布を研究するには不適当である。しかし生体内での状態を標本中に保存する確実な方法は得られておらず研究者によって(1)新鮮凍結乾燥超薄切片 (2)凍結置換法(3)凍結切片の凍結状態での分析(4)新鮮伸展標本等のいろいろなものが試みられている。我々は新鮮凍結乾燥超薄切片を無固定, 無染色で電顕観察(加速電圧40〜100KV)すると核, 核小体, 粗面小胞体, 糸粒体, 分泌顆粒等が見られたが標本作製中に氷の結晶によるartefactsが生じ良い標本を得ることが困難であった。新鮮伸展標本でも同様の微細構造が観察でき, エネルギー分散型X線微小(EDX)分析によりいろいろな元素が良く保存されていることが解った。人血小板のdense bodiesにCaとP, マウス膵臓外分泌細胞チモーゲン顆粒にP, S, Cl, Kの他にMgとCa, 人毛根メラニン産生細胞のメラニン顆粒にP, S, Cl, Kの他にMgとCa, 多くの細胞の糸粒体の微細顆粒にPとCa, 顆粒間にS, Cl, K, 一般に核では核小体, 核周辺部にCaが検出された。Ca++のsecond messengerとしての役割が明らかになると共に細胞内のCaとMgの分布の研究が重要となってきたがEDX分析ではMgはbackgroundが高いためピークとして認めがたくCaはKが良く保存された標本ではK-KβとCa-Kαとが別々のピークとして認めにくい欠点がある。脳の伸展標本をEDX分析するとP, S, Cl, Kはほとんどの部分で検出されるがMgはNeuronの核小体, 核周辺部とsynapticとboutonsのみでピークが見られ細胞算中ではほとんど検出されなかった。しかし波長分散型X線微小(WDX)分析によるとほとんどの部分でMgが検出されたが, Caは核小体, 核周辺部, 糸粒体, シエリンでのみ検出された。Mgのピーク/background比をくらべると核小体部以外はほとんど同じで細胞内ではほぼ同じ濃度で分布しているように思われる。しかし上記顆粒のほかに好中球, 好酸球, 肥満細胞では顆粒にMgがEDXとWDX分析で検出される。肥満細胞の新鮮凍結乾燥超薄切片をいくつかの改良を加えて作製し, EDXとWDX分析によりMgとCaの分布を検討中である。
- 1978-11-01
著者
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