SII-5 5. 脂肪細胞の超微構造の動体
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概要
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脂肪細胞(本研究は白色脂肪細胞のみについて行った)の超微形態学的研究は比較的少なく, 殊にその微細構造と機能に関連しては不明な点が少くない。われわれは, ウィスター系成熟雄ラットの7〜10日間絶食, およびその後の普通固型食投与や, 脂肪乳剤(イントラリピッド)静注後の傍副睾丸脂肪細胞の超微構造の動態を検索し, また雄ラット出生後の同上脂肪細胞の分化・発育時における超微形態的変化を観察した。成熟脂肪細胞-細胞質は大脂肪滴により辺縁に圧排されているが, この中にミトコンドリア, 径約500〜800Åの微小空胞, 滑面小胞体などの細胞内小器官の発達がみられ, 本細胞の物質代謝の活発さを反映している。細胞膜には, 上記微小空胞とほぼ同形同大のmicro-invaginationがみられ, 前者や滑面小胞体との連続があり, また細胞膜に接してその周囲を厚さ300Å前後の基底膜が取り囲む。脂肪滴には限界膜は無いが, それを取り巻く滑面小胞体を認め, 本器官の脂肪合成或は分解への深い関与を示唆する。絶食時の脂肪細胞-脂肪の分解放出による細胞の縮少, シダの葉状の細胞突起形成, 脂肪細胞を囲繞する基底膜のひだ状の細胞膜からの解離, 細胞質における微小空胞の著増など著明な形態変化を示した。脂肪滴は辺縁不整で, 多くの微小空胞の接触のみならず, 一部に短い滑面小胞体性膜系構造が束を成して脂肪滴に交わるのが見られた。これは, 脂肪分解が脂肪滴表面でアクティヴに行われる可能性を想像させる。絶食後栄養投与時の脂肪細胞-固型食投与では, 脂肪細胞内に滑面小胞体に囲まれた大小の新生脂肪滴が出現し, それに密接して多数のグリコーゲン顆粒が密在したが, これはグルコ-スの関与した脂肪合成の旺盛さを反映する。一方, 絶食後の脂肪乳剤静注では, 脂肪細胞内における脂肪滴形成が前記固型食投与時より貧弱で, 新生した小脂肪滴周囲の滑面小胞体は不分明であり, グリコーゲン顆粒は見られなかった。分化・発育時の脂肪細胞-生後数日間の雄ラットの上記組織は, 未だ脂肪細胞を光顕的に認めず, 生後7日以降に毛細血管の発達と共に脂肪細胞の急激な増生を見た。電顕的に観察可能な小脂肪滴はpre-adipose fibroblastに見出され, 成熟につれ粗面小胞体の減少, 滑面小胞体の増加, 脂肪滴の融合を示した。初期形成の小脂肪滴と異なり, 後期分化細胞の脂肪沈着増量時には, 脂肪滴を包囲する滑面小胞体の発達が見られ, 脂肪合成能の分化が形態面からも推測された。
- 日本組織細胞化学会の論文
- 1977-10-20