SI-6 6. 粥状動脈硬化症とライソゾーム機能
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概要
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粥状動脈硬化症にわいて, cholesterolとそのesterが動脈壁細胞間ならびに細胞質内に蓄積してくることは, よく知られている事実である。動脈硬化時には, 細胞質に沢山のVacuolesないしdropletsを蓄えた, いわゆるfoamy cellsが中膜に出現してくる。これらの細胞を電子顕微鏡による組織化学を用いて検索すると, vacuolesならびにdropletsはacid phosphatase陽性であることが分る。この事実は, cholesterolならびにそのesterがlysosomes内に蓄積している可能性を示唆する結果と考えられる。cholesterolならびにそのesterがlysosomes内に蓄積してくる原因は, esterの分解に参画していると考えられているcholesteryl ester分解酵素が後天的にlysosomes内で欠損してきたためであろうとの仮説を立て, 以下実験を試みてきた。1. 動脈壁より中膜平滑筋細胞ならびにfoam cellsを分離することに成功し, 細胞分画により, lysosome画分を得ることが出来た。2. cholesterol ester分解酵素の高感度測定法を確立し, lysosomes内局在性を証明することが出来た。しかもこの活性は膜と結合している可能性が高い。3. この酵素活性はcholesteryl esterを蓄積している顆粒では特に低下している可能性が示唆された。4. この酵素を精製したところ, この酵素活性は膜によって, 活性化されることがみい出された。5. 動脈硬化時のlysosome膜を分離することに成功し, その諸性質を検索したところ, 膜のfree cholesterolが正常時の数100倍に増加していることがみい出された。(esterは検出出来なかった。)6. 細胞内に蓄積しているcholesteryl esterは等方性の液晶構造をとっており, 95%以上がesterで占められており, そのうち75%がoleic acidのesterである。以上の知見から, 粥状動脈硬化症のlysosomeからみた発症原因を考察すると, 次のように考えることが出来るかもしれない。血中より侵入してきたlipoproteinは, 細胞内にとり込まれ, lysosome内で分解される。分解産物であるfreeのcholesterolは徐々にlysosome膜で増加し, 膜依存性の高いcholesteryl ester分解酵素の活性に低下をみるようになる。その結果, cholesteryl esterは未分解のまゝlysosome内に蓄積し, ある一定の溶解度以上に達すると急激に液晶として折出してくるのかもしれない。lysosome膜にfree cholesterolが増加することによって起るもう一つの傷害は, cholesterol量の変化にともなって, 膜の性質に変化が生ずることであろう。すなわち, cholesteryl esterを蓄えたlysosomesはprimary lysosomesと融合出来なくなり, 新しく合成された酵素の補給が出来なくなる。あるいは, lysosome膜は細胞膜と融合出来なくなり, lysosomesに蓄えているcholesteryl esterを細胞外に排泄出来なくなっている可能性が考えられる。上述した仮説が動脈硬化時にcholesteryl esterが細胞内に蓄積してくる原因となっているのかもしれない。これらの仮説をさらに解析するためには、さらに詳細な検索と証明が望まれるところである。
- 日本組織細胞化学会の論文
- 1977-10-20
著者
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