SI-5B 5. 『スフィンゴリピドーシスとライソゾーム』 : B ライソゾーム酵素とSphingolipidosis
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概要
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Sphingolipidosisはライソゾーム酵素の欠損によって生ずる遺伝性蓄積症である。病理学的には多数の蓄積細胞の存在により特徴づけられ, 脂質の種類により特有の形態学的変化を示す。酵素欠損はすでに胎児期より存在することが確実であるが, 病気としての症状の発現は必ずしも一定でない。Sphingolipidは一般に中枢神経系に多く存在する脂質である関係上, その蓄積症は乳児期における進行性脳変性疾患として見出されることが多い。しかし同じ性質の病理学的, 生化学的異常を示すにもかかわらず, 発症年令がおそく, 経過が長い症例も知られている。又中枢神経症状の強い病型と, 全く中枢神経症状を欠く病型とがあることも事実である。これらの臨床的表現の差の由来について, 十分な説明はなし得ないが, その一つの可能性として, 生化学的変化の量的差異の存在が考えられる。正常に生体細胞内で行なわれている物質代謝に必要な酵素活性が低下した場合, もしその程度が著しいものであれば, 細胞の機能障害は早期より出現するであろうし, ある程度の活性が残されていれば, かなりの期間の機能的代償は可能であろう。本講演ではこのような観点から分析をすすめてきた演者自身の成果について述べてみたい。GM_1-gangliosidosisはβ-galactosidase欠損による乳児期の代表的な脳変性疾患であるが, 幼児期, 学童期あるいはそれ以後に発病する症例もある。これらの症例から得られた種々の細胞のβ-galactosidase活性はほとんど検出し得ない程度にまで低下していたが, ^<14>C-galactoseのganaliosideへのとりこみの経過をみたところ, 発症の早い症例ほどGM_1蓄積の強い傾向がうかがわれた。このことからin vitroでは見出し得ないような量的な差がin vivoでは存在する可能性が考えられた。しかしinvitroでもGM_2-gangliosidosis, metachromatic leuko-dystrophyなどでは遅発型症例では明らかに相対的に高い残存酵素活性が認められた。臨床症状が出現する以前にも, 酵素欠損の結果としての形態的, 生化学的変化が存在することは, 出生前診断例その他の特殊な症例で確かめられているが, 今回はTay-Sachs病及びFabry病症例における発症前の病態につき, これまでの成績を述べる。最後に二次性の酵素欠損症と考えられる症例につき, その病態を, 一次性の酵素欠損症と対比, 考察してみたい。
- 日本組織細胞化学会の論文
- 1977-10-20