SI-1 1. ライソゾームの調節機構について
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概要
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近年, 種々の条件下におけるライソゾームの動態に関して, 多くの研究がなされた結果, ライソゾームは細胞内でおこなわれる諸物質の消化過程において, それらの分解活性の担い手としての役割を果すことにより機能していることが明らかにされてきた。de Duve一派によってなされた一連の定量的な解析を含めて, グルカゴンによって肝細胞に誘導された自己貪食現象に際しての, ライソゾームの動態に関してなされた多くの研究から, この自己貪食過程においては, 既存のライソゾームが, 主として小胞体に由来すると思われる膜によって形成された自己貪食液胞と融合することによって機能していることが示されているほか, ライソゾームはまた, グルカゴンを投与された肝において, 貪食様の機序によって細胞質の一部を包み込み, これを消化することによっても機能することが認められている。このライソゾームによる細胞質の包み込みの現象は, C-AMPを投与された肝細胞においても認められた。その後, 糖新生促進効果という観点から, 筋肉をはじめとする諸臓器組織において, 蛋白質分解を促進することにより体組織と肝との間のアミノ酸平衡を移動させて肝に糖新生の主要素材であるアミノ酸を供給する働きのあることが知られているグルココルチコイドの効果を検討した。グルココルチコイドとしては酢酸コルチゾンを用いた。その結果, 酢酸コルチゾンを投与したラットの腹水癌細胞に, ライソゾームによる細胞質の包み込みが促進されると思われる所見を得た。また, DaterとDe Duveは, グルカゴン投与肝で誘導された自己賃食過程におけるライソゾームの変化に関する研究(R. L. Deter and C. de Duve, J. Cell Biol. 33, 437, 1967)から, この過程において, ライソゾームの大きさが増加することを示唆し, さらに, このことは, 自己貪食液胞と既存のライソゾームとの融合によって起こる現象であると結論している。このグルカゴシにより誘導される自己貪食過程におけるライソゾームの動態を形態学的に明らかにすることを目的として, 彼らの実験に再検討を加えた結果, 毛細胆管周囲域に見られるライソゾームに減少卦よぴ細胞質全体に分散しているオートファゴライソゾームと思われる大型顆粒の出現などの変化を認めたので, 現在さらに検討を加えている。これらの, 糖新生を促進すると考えられている条件下においてみられたライソゾームの動態に関する所見について述べる。
- 1977-10-20