SA-IIペルオキシダーゼ組織化学の二、三の問題
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概要
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Endogenousなペルオキシダーゼの局在を求める研究は, R. Fischel(1910)のベシチジン・過酸化水素による血球鑑別染色以来, 光顕のレベルでいろいろな組織について行なわれたが, 結局肝臓以外に見るべき所見が得られず, いきおいペルオキシダーゼの組織化学は, 血液学と深い関係を持つに至った。言うまでもなくこの反応は, 骨髄性とリンパ性の白血病の鑑別診断に欠かせないものとなり, 手技の改良も種々工夫されたが, 研究対象は依然血球にとゞまった。その間, 臨床的にはStriatal blood picture (A。Sato), Chediak-Higashi病(M。M. Chediak & O. Higashi)さらに好酸球と好中球のペルオキシダーゼ解離症(V. J. Grignaschi)等の診断にペルオキシダーゼの組織化学が利用され, その価値を高めた。また脊椎動物の顆粒球の反応を周到に検討した結果, Felidae, 有尾両生類以下の動物では好中球反応陽性, 好酸球反応陰性の解離現象が見られ, また外見上正常なオオサンショウウオの好中球にChediak-Higashi病と同様な巨大顆粒が見られるなど, 系統発生学及び人類遺伝学の立場から十分考慮すべき現象を認めた。さてベルオキシダーゼ反応は二重の基質を持ち, H-donorとしてaromatic seriesのいくつかゞあり, H-acceptorとしてはNa_2O_2, BaO_2等があるにもかゝわらずH_2O_2がもっぱら用いられている。手技は二重の基質を混合して用いるため比較的簡単ではあるが, 結果の判定は慎重でなければならない。固定剤の酵素阻止力も間頽である。演者がはじめて試みたTriturus viridesens viridescensの肝臓の固定剤は1%OsO_4であった(1960)。当時Osのような重金属に対しても活性を保持しているような酵素は酵素と言えるであろうか, という疑問に悩んだが, その後グアヤコールをH-donorとして, 分光光度計によるRate-assayを実施した結果, 次のような成績を得た。すなわちHorseradish peroxidase (HRP)(Sigma Type・)を蒸溜水に溶解した時の活性値を100とすれば, 各固定剤を室温で2時間作用させた後のHRPの活性値は次の通りであった。メタノール24, 4%グルタールアルデヒード34, エクノル80, 1%OsO_4 82, アセトン85, 4%パラフォルムアルデヒード91.8, 2%グルタールアルデヒードと2%パラフォルムアルデヒードの等量混合液94.2。さてベルオキシダーゼの組織化学術式が電顕のレベルで利用される時代に入ってからは, 同術式の利用価値は拡大され, ことに光顕ではほとんど確認できなかった甲状腺上皮細胞その他多くの細胞について新知見が発表された。さらにExogenous HRPを活用して物質代謝や免疫組織化学, 神経路追及等の面で, こんにちの細胞生物学に大きな寄与をしていることは, なにびとも良く知るところである。以上本酵素組織化学の発展史をふり返るとともに, その後チトクロームC等に関して得られた新知見を述べて, 同学の研究者の参考に供したい。
- 1977-10-20
著者
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