病院内学級における教育実践に関するエスノグラフィック・リサーチ : 実践の"つなぎ"機能の発見
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概要
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本研究の目的は,ひとつの病院内学級における教育実践のありようを検討することから,教育実践が入院児童の生活世界の中でどのような機能を有するのかを発見することである。混沌とした実践を理解する解釈枠組みを仮説的に提示することで,日常的には見すごされがちな実践の"意味づけ"を行った。入院児童・生徒への教育の必要性はつとに叫ばれながらも,関連先行研究はごくわずかしがなく,本研究は未踏の分野における探索的研究と位置づけられる。研究目的および研究分野の特性を考慮し,フィールドワークによる多角的データ収集を行い,質的研究法の手順に則った分析を行うことを選択した。結果として,教師の実践が<関係調整/参加援助/心理的ケア/環境設定/学習援助/疾患理解援助/しつけ>の7つのカテゴリーに分類され,さらに踏み込んだ解釈から病院内学級の教育実践が,孤立し,エネルギーを失っている児童の生活世界のシステム間を<つなぐ>という援助機能を有していることを見出した。この<つなぎ援助>という仮説的な実践の見方は,病院内学級教育における実践的有効性ばかりではなく,従来は「入院中でも勉強を教える」という役割のみが注目されていた病院内学級の実践がよりシステマティックな援助機能をもつことを明らかにした。
- 日本発達心理学会の論文
- 2004-08-20
著者
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