道徳的違反と慣習的違反における罪悪感と恥の理解の分化過程
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概要
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道徳的・慣習的違反のあとに,謝罪や補償などの向社会的行動をとるか,それとも逃避などの非社会的行動をとるか,の推測に関して,罪悪感と恥の感情を媒介にして検討した。幼児ではどんな場合であっても違反に対しては罪悪感に媒介された向社会的行動をとると推測していたが,成人では慣習的違反の場合や道徳的違反でも軽微な場合など状況によっては恥の感情に媒介された非社会的行動をとることもあり得ると考え,その移行過程が小学生の時期に見られた。さらに,違反行為のあとにとる行動の評価に関しても,慣習的違反行為の場合,逃避などの恥の感情に媒介された非社会的行動をとっても成人での評価はそれほど低くはならないが,小学生では謝罪などの向社会的行動をとった場合に比べると低くなることが示された。また,本研究は,罪悪感や恥を,それらのことばの概念や用法が異なる文化間であっても,機能的側面に注目することで,ことばの違いに影響されずに,社会的認知に関しての比較文化的研究を進めるための方法論についても提起するものである。
- 2004-04-20