関与観察者の多様な存在のありよう : 保育の場での子どもの「育ち」を捉える可能性を探り当てる試み
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概要
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近年,保育の場は,子どもが育つ場として,ますます重要な機能を担いつつある。発達心理学の中でも,そこで生きる「子どもの育ち」の実情について,知見を重ねてゆくことが必要であろうし,そのためには,方法論の整備が待たれるところである。本論では,具体的な事例に即して,保有の場での関与観察者の存在のありようを明らかにし,その場での子どもの育ちを捉える可能性を探り当てることを目的とした。事例分析の結果から,以下の三つの方法論的観点を新たに提示した。(1)保育の場における関与観察者の存在のありようとは,その都度の場の流れに応じた「子ども-保育者-観察者」関係の中で,生きられるものである。(2)関与観察者は,その特性として,保育の場の内部と外部の連続帯の上で,多様な存在のありようを身にまとう。(3)関与観察者は,その存在のありようの多様性を利することで初めて,複雑で奥行きのある個々具体の出来事の意味を読み解くことができるのであり,結果,手応えのあるかたちで,その場での子どもの育ちの実情を捉える可能性が開かれる。以上の議論を踏まえ,関与的観察一般の課題として,(1)関与観察者の自己記述という試みの方法論的展望,(2)関与的観察の自己言及性,(3)関与的観察の倫理的問題の三点を挙げ,考察を行った。
- 日本発達心理学会の論文
- 2003-04-20
著者
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