幼児における吹出しによる表象理解の発達
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究では,3歳から6歳までの就学前児を対象に,3つの課題において吹出しによる表現理解が就学前にどのように変るかを検討した。知識課題では,就学前に心的事象と吹出しに関する気づきが始まることが示された。理解課題では,吹出しによって図示された登場人物の心的事象についての説明は,3歳から5歳にかけて発達した。心的事象についての説明は,3,4歳では現実の行動についての説明より難しかったが,5歳で行動説明とほぼ同じレベルに達した。心的用語の教示は3,4歳児の心的事象説明を促す効果があった。産出課題においては,理解課題において有効であった心的用語の教示の効果が認められなかった。産出課題における空の吹出しによる他者推測状況では,加齢に伴い表現可能な人数が増加する傾向が見られた。同じ刺激による自己表現状況において,どの年齢の幼児もほとんどが表現可能であり,その理由付けとして「好き」や「欲しい」に言及した。さらに,他者推測状況では5,6歳児において「何も考えていない」と答える無の思考への言及が観察され,4歳と5歳の間に心的事象に関する理解枠組みの質的変化があることが推測された。
- 2002-08-10