移行型経済圏における民営化政策と環境問題の関係
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概要
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東欧・中欧をはじめとする共産・社会主義圏は1980年代後半から1990年代初頭にかけて体制転換が行われた。旧体制下でなおざりにされてきた環境問題もこの時に顕著化してきた。その背景にはEU(欧州連合)への加盟を見据え、EUレベルの環境基準達成が新たな課題となってきたのも一因している。こうした環境改善への方針は国際機関からも支援され、順調に進むかのように見えた。しかし、完全に経済を資本主義形態に転換していくためには公営・国営企業の民営化が必須のものとなっていった。環境汚染源の多くは大型国営企業であり、これが民営化されれば一私企業となるわであり、環境改善への国際支援を活用できないという状況になってきた。さらに環境汚染を過大に問題視すれば、その国営企業の民営化を鈍化(新所有者獲得の困難化)されることにもなりかねなくなってきた。こうしたジレンマにあえぐ移行型経済圏への環境対策支援、とりわけ国際的融資方法をケースごとに考察した。たとえば、BOT(Build, Operation and Transfer)形式の民営化方法などもその例である。多くの民営化具体案件は当該国の新所有者間の機密に属するところもあり、十分な事例研究がなされていないのが実状ある。東欧・中欧の環境問題と民営化政策進行度やそれに対応しようとする国際金融機関の新融資制度に関する考察、さらに環境問題と民営化政策を融合しうるような国際支援のあり方を模索したものである。その結果として、国際的に認知されている『持続保存可能な開発』コンセプトの現状に適合した見直しを提案するものである。
- 1999-03-31