ゴルバチョフとエルツィンのもとでのロシア対日政策
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概要
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ゴルバチョフとエリツィン。一般的には、類似性よりも相違点がはるかに大きいロシアの二人の政治家である。しかしこと対日外交行動様式および対日戦略にかんしては、共通点が多い。本論文は、両指導者に観察されるそのような共通点を指摘することを、主な目的とする。次期ロシア最高指導者(プーチン?)も亦恐らくは両者に類似した対日政策を採ることを示唆している。第一の共通面は、対日外交行動様式にかんし、ゴルバチョフ、エリツィン両政権が同一パターンを示した点に存在する。そのようなパターンとは、次の三段階からなりたっていた。第一段階は、「ハネムーン」期。発足当初両政権はともに、腹心ナンバーワンを東京に派遣し、日本に対し「微笑外交」を展開した。しかし、対日関係を好転するためのハードルの高さ(北方領土問題)を認識するにつれて、日本熱を冷まし対日関心を一時的に後退させる第二段階を迎える。日本に比べ優先順位の高い米国、西欧、中国にたいする外交が一段落した後に、両政権ともに対日関心を復活させる第三段階を迎える。しかし、時すでに遅く、領土問題を政争の具にしようとする国内反対派の存在を恐れて、両政権ともに日本に対し突破口を開きえないままに、政権の終焉期を迎える。第二も共通点は、両政権の対日戦略の分野に存在した。両政権ともに、日本からは経済的支援を切望する一方、その代償として島を譲りたくないというジレンマに直面した。このジレンマの解決策として、日本に対し自己の現政権の座を脅かすにはいたらない程度の譲歩を行う戦略を採用した。つまり、四島を両国間の論争対象とすることには合意し、さらに四島が100%ソ連 / ロシア領でない「特殊地域」であることも承認した。また、困難な領土問題の解決のためには先ず「環境整備」が先決であると説き、日本から経済支援を引き出す一方、領土問題の解決を可能な限り遷延しようとした。以上のごときゴルバチョフ、エリツィン両政権に観察される共通点は、北方領土問題が突きつける日露関係改善の困難な課題に由来する。したがって、指導者の顔ぶれ如何に関係なく、今後も存在し続けると予測できる。
- 1999-03-31