2.窒素酸化物および光化学スモッグによる大気汚染と肺癌
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概要
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大都市における窒素酸化物(NOx:N0_2とNO)による大気汚染は環境基準値に数倍する現状であり,特に幹線道路沿いの排気ガスによる汚染は深刻である.NOxの人体影響が亜硫酸ガスよリ悪質であるとされる理由は(1)NO_2は深達性のため末梢気道障害性が強く,特に終末気管支上皮細胞および肺胞上皮細胞に増殖性変化を惹起し,インフルエンザウイルス感染と合併した場合に腺腫様異型化がみられることが実験病理学的に認められ,さらに(2)NO,NO_2がinvitroで2〜3級アミンと結合して発癌物質ニトロサミン類を生成する反応が,生体内でも起りうる可能性が報告されているからである.光化学スモッグの主成分であるオゾンでは上述の増殖性変化がN0_2より更に強くおこる.これらの所見は現状の汚染濃度に近い実験濃度で認められているので,N02および光化学スモッグと大気中に存在する種々の発癌物質との複合影響は,肺癌との関連において病学的に研究される必要がある.
- 日本肺癌学会の論文
- 1974-12-30