プーシキンとスタール夫人の『ドイツ論』
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概要
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プーシキンの1820年代の文学作品および彼のロマン主義理解に対してスタール夫人が及ぼした影響についてはこれまでも研究がなされてきた。このノートの目的は『ドイツ論』に見られるスタール夫人の考えが、プーシキンの初期のエッセイ『悲劇について』『文学における国民性について』そして彼の傑作のひとつである『エヴゲーニー・オネーギン』の中にいかに反映されているかを分析することである。スタール夫人によれば、当時の劇芸術が一国内で人々に受け入れられるためにはその国の国民的精神を内包する必要があった。彼女はこれをロマン主義の果たすべき役割と理解した。スタール夫人はシェイクスビアの作品を真のロマン主義文学の最良の例のひとつと考えたが、彼の作品は当時のイギリス社会の全ての階級の人々に広く受け入れられていた。プーシキンは、以上に述べたスタール夫人の考えに共鳴し、彼女の考えは彼の後の作品に反映された、と私は考える。ロシアの詩人はエッセイの中でロマン主義の正しい理解ときらなる発展のために悲劇執筆の必要性を主張した。プーシキンの有名な悲劇『ボリース・ゴドゥノーフ』はスタール夫人の『ドイツ論』の影響を多大に受けていると私は仮定する。プーシキンのエッセイの分析は私のこの見解を支持しており、『ドイツ論』は1820年代の彼のロマン主義理解および創作に対して本質的なものであった。
- 2001-03-31
著者
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