実験的糖尿病ラットの下部尿路機能に関する研究
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概要
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(背景と目的)糖尿病では下部尿路機能障害を合併することは広く知られているが,その本態に関し一定の見解は得られていない.そこで,実験的糖尿病ラットを対照として,糖尿病性下部尿路機能障害の解明を試みた.(方法)対照は,Wistar系,雌ラットを使用し,対照群(正常ラット),糖尿病ラット,利尿ラット,の3群に区分し,尿道内圧及び膀胱内圧を同時に測定することにより下部尿路機能に検討を加えた.(結果)糖尿病ラットでは体重は減少し,血糖値は上昇し,膀胱重量,膀胱容量,残尿は増加した.膀胱内圧および尿道内圧同時測定では,排尿反射に至らない膀胱収縮が出現し,それと同時に尿道内圧も上昇した.さらに排尿反射直前でも脊髄を反射中枢とする尿道内圧の上昇が出現した.この尿道内圧の上昇は臭化パンクロニウムの投与により消失したことから,外尿道括約筋の活動によるものと考えられた.最大膀胱収縮圧は,糖尿病8週目で硫酸アトロピンの投与により有意に抑制された.(結論)実験的糖尿ラットでは,尿禁制時における外尿道括約筋の活動が亢進しており,脊髄内でのニュ一ロン伝達に変化が生じていること,また,膀胱平滑筋のムスカリン作用には経時的変化が認められ,糖尿病8週目で増強するとが示唆された.
- 社団法人日本泌尿器科学会の論文
- 1996-01-20