腎移植後早期における血中エンドセリン動態

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エンドセリン(ET)は腎移植後の急性拒絶反応やcyclosporin A(CsA)腎毒性に関与していると推測されている.腎移植後早期におけるETの病態生理学的役割を解明するために移植患者,慢性維持透析患者,健常人における血中エンドセリン-1(ET-1)濃度をラジオイムノアッセイ法により特異的に測定した.生体腎移植8例,屍体腎移植4例において血中ET-1は手術前日から術後1週間連日と,その後1週間間隔で4週間まで血中ET-1濃度測定を行った.その他,腎機能の安定した移植患者20例(血清creatinine≦1.8mg/dl),慢性維持透析患者20例,健常人6例においても血中ET-1を測定した.腎機能の安定した移植患者の平均血中ET-1濃度は13.0±4.5pm/ml,慢性維持透析患者は21.7±6.5pg/ml,健常人は1.5±0.4pg/mlであり,有意差を認めた(p<0.02).移植後早期において,血中ET-1濃度は移植前の21.8±7.2pg/mlから移植後で尿量1,000ml/day以上を認めた時点で12.8±4.0pg/mlとなり,移植腎機能の発現に伴い有意に低下した(p<0.02).組織学的に急性拒絶反応と思われた症例は3例で,いずれも血清creatinine値の上昇に伴って血中ET-1の上昇を認めた.生体腎移植における術後1週間の血中ET-1と血清creatinineは有意な相関を認めた(r=0.744,p<0.02).臨床的もしくは組織学的にCsA腎毒性と診断した症例は2例で,CsA濃度の上昇に伴って一過性の血中ET-1濃度の.L界を認めた.以上より,拒絶反応およびCsA腎毒性いずれにおいても血中ET-1は一過性の上昇を認め,ET-1はこれらの病態に何らかの関与をしている可能性があると考えられた.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1994-11-20

腎移植後早期における血中エンドセリン動態

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