常染色体優性遺伝(成人型)嚢胞腎
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概要
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常染色体優性遺伝嚢胞腎(ADPKD)は進行性の腎機能低下が主要な病態であるが,その予後は従来いわれているように「診断後10年で腎不全に到る」ものでもなく,腎不全が不可避でもない。本邦での透析導入時平均年齢は52〜56歳であるが,透析に移行しない老も含めると,おおよそ平均73歳で終末期腎不全に到る。60歳代で透析を受ける割合は約40%であり,本邦のADPKDの予後は欧米よりも若干良好である可能性がある。ADPKDの遺伝子は第16染色体の短腕上のα-globin遺伝子の近くに存在することが確かめられている。この遺伝子(PKD1)によるADPKDと,PKD1の関与が証明されないADPKDでは,腎機能の予後が異なることが報告されている。高血圧は約60%に認められる。嚢胞の圧迫によって腎動脈が狭細化し,レニンーアソギオテンシンーアルドステロン系が刺激されることが高血圧発症の端緒であり,片側性腎血管性高血圧と異なり両腎が侵されているので,圧Na利尿がおこらず,Naが体内に貯留し高血圧となると考えられている。肝嚢胞の合併頻度は57%で高齢になるに従い増大し,肝嚢胞の有る者ほど腎機能は悪い。肝嚢胞と膵嚢胞(7%)の合併は有意に相関する。経皮的嚢胞穿刺を行っても腎機能は改善せず,出血や感染などの合併症もあるので激しい疼痛や管理の困難な感染の治療を目的とする以外は実施すべきではないと考えられる。その他ADPKDには,腎結石(10〜18%),大腸憩室(80%),頭蓋内動脈瘤(8%),心臓弁膜の閉鎖不全(20〜30%)などの合併症がある。
- 1991-10-20
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