硝酸ウラニル誘発急性腎不全に関する研究
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概要
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急性腎不全の発症機序は未だ十分に解明されていない.発症早期の初期変化を詳細に検討することがその解明につながると考えた.麻酔犬に10mg/kgの硝酸ウラニル(以下UNと略す)を投与すると急速な糸球体濾過値(以下GFRと略す)低下と利尿が観察される.この利尿は尿細管でのSH活性の阻害により再吸収機能が抑制された結果,出現した可能性もある.そこで蛋粘H基を保護すると考えられている還元型グルタチオン(GSH)を用い,発症期に於ける腎皮質内SH群の変動を検討し,UN初期毒性との関係を明らかにせんとした.次に重金属キレート剤であるEDTAを用い,急性腎不全発症期に於けるEDTAの防御効果の有無および腎の機能的変化と形態的変化との関連性を明らかにせんとした.可溶性蛋白SH基含量はUNにより有意に低下したが,GSHで前処置することによりその低下を有意に抑えることが出来た.可溶性蛋白SH含量とGFRとの関連性がないことからUNによるGFR低下に対してSH基が必須の要因とはなっていないことが示唆された.UN単独投与によりGFRの低下が観察され,電顕的には糸球体内皮細胞の腫大,内皮小孔の減少並びに糸球体基底膜の内透明層が著しく不規則に肥厚する像が観察された.一方,UN投与直後にEDTAを静注することにより機能的,形態的に急性腎不全に対する防御効果が認められた.これらのことから糸球体の特徴ある形態的変化が糸球体透過性に関わりを持ち,GFR低下の一因をなしたかも知れない.
- 社団法人日本泌尿器科学会の論文
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