成人の膀胱尿管逆流と上部尿路の変化について
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概要
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著者はVURと上部尿路の変化およびVURそのものの経過について,動物実験および臨床的に長期観察を行なった. 動物実験では膀胱部分切除術により起こしたVUR側の上部尿路に持続期間6ヵ月以内では異常を認めなかった. 成人の各種疾患の場合で43人のVUR患者を認めた. 43例中腎孟腎炎と共存したものは組織学的に3例,X線上でも8例である. VUR症例中で,primaryおよび先天性におこったVURでなく, すなわち二次的なものやiatrogenic によるものは比較的長期間に持続しても上部尿路の影響はきわめて徐々であった. VURと上部尿路の変化の因果関係をたしかめるため,iatrogenic なものを抽出し,長期観察した結果VURが先行すると考えた方がよいと思う. また,成因のいかんにかかわらず,長期間持続するVURと上部尿路の諸変化の共存は互いに悪化を助長すると考えられる. 逆流の高さに比例して,青排泄の悪化傾向がみられた. 腎生検所見では,逆流の高さI度のものでは著変はたいが,III度では正常組織像を有したものはなかった. 腎組織所見は腎孟腎炎の所見よりも,逆流による流体力学的な閉塞による通過障害にもとずく変化を示すものの方が多かった. 逆流側腎尿の細菌培養にて半数に細菌を認め. PSPとUNも逆流の高さがIII度になると悪化を示した症例があった. 逆流の持続期間に比例して青排泄,尿管尿流圧,逆流の高さは明らかに悪化を認めた. UNは数年以内では侵されないが,それ以上におよぶと侵されるように思われる. 43例の成人VUR症例中,VUR発見時に逆流の高さが低く,感染がなく,慢性膀胱炎や,iatrogenicによると思われるVURは長期間後の6ヵ月から60ヵ月の間に8例の自然治癒例をみた. primary や先天性のもの以外の成人のVUR患者で逆流防止術を行なったものはないが,長期間の観察で自然治癒がない場合には防止術を考慮すべきと考える.ただし,治療は逆流そのものよりも原疾患に対する考慮をする必要がある. (本論文の要旨は41年第54回日本泌尿器科学会総会,42年第55回日本泌尿器科学会総会,43年第56回日本泌尿器科学会総会,44年第57回目本泌尿器科学会総会において発表した). 稿を終るにあたり,恩師多田茂教授および長年絶えずご教示,ご鞭達をいただいた森幸夫助教授に深甚の意を表します. なお本研究は昭和42年度文部省科学研究費の補助を受けたことを明記する. なお,本実験は本学塩浜病院において行なった.
- 社団法人日本泌尿器科学会の論文
- 1972-10-20
著者
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