尿中の白血球の貪食能の検討
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概要
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尿路感染症患者の尿中の白血球は平均82%が生存しており,詳細に観察すると,細菌を貧食しているものが少なからず認められた.全体の白血球の中で細菌を貧食している白血球が占める割合(貧食率)の高い尿は浸透圧が600mOsm/L以下, pHが7〜8であった.急性膀胱炎,急性腎盂腎炎,慢性膀胱炎,慢性腎盂腎炎の平均貧食率はそれぞれ,3.0%,2.1%, 13.2%,18.3%であった.急性症では尿中細菌の菌数にかかわらず貧食率は低値で,慢性症では菌数の増加に伴い貧食率が増加した.カテーテル留置例は非留置例に比し貧食率は高値であった.カテーテル留置の慢性膀胱炎患者は全例 antibodycoated bacteria(ACB)陽性で,非留置の慢性膀胱炎患者でも58%が陽性であった. ACBのオプソニン効果は明らかでなかった.末梢血多核球を分離し正常および感染尿中で酵母の貧食実験を施行すると,Lab-Tek chamber法では正常尿,感染尿とも800mOsm/Lまで浸透圧にかかわらず20〜30%の白血球が貧食したが, tube法では600mOsm/Lを越えると貧食は行なわれず,600mOsm/L以下でも多くは5%以下であった.しかし, tubeを遠沈し接触機会を増加させると600mOOsm/L以下では著明に増加した.正常尿と感染尿で貧食率に及ぼす差異は認められなかった.尿路感染症の尿中の白血球の微細構造と,感染尿に latex粒子,無菌性膿尿に大腸菌を注入した場合の貧食状況を電子顕微鏡で確認した.以上の観 察より尿中の白血球も感染防御の一役を担っているものと考えられた.
- 社団法人日本泌尿器科学会の論文
- 1983-10-20
著者
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