活断層等の地質情報と行政について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1995年兵庫県南部地震は, 一般市民はもちろん自治体等の行政担当者に, 活断層・地震といった地質学的専門用語を身近にさせるとともに, それまでは大学や国の研究機関が行ってきた調査・研究をも地方自治体が取り扱うようになった。これまで, 兵庫県の一部の部局は, 県内の活断層等の調査を行い、その存在を認識していたが, これら情報は必ずしも十分に活用されていなかった。兵庫県は, 地震直後から, 特に被害の著しかった阪神地域の地下構造を明らかにするため「阪神地域活断層調査」に着手した。その後, 多くの自治体もこの種の調査を行っている。しかし, これら調査によって得られる知見, 情報はまだまだ一般市民にわかりやすく理解されるには至っていない。こうした状況を考慮する時, 今後は地質専門家と行政のより多くの接触と相互の積極的な情報交換が必要になると思われる。例えば, 地質専門家や自治体担当者で構成する連絡会を組織すること, 自治体が地質情報を理解し行政内部の関係者に通訳できる専門家を置くこと, 地質・地盤に関するデータベース化システムを設け, 地質専門家はじめ土木, 建築, 防災等の関係者に情報を提供することなどがなされても良いのではないか。また, 地質や活断層等に関する調査が行われた場合, これら結果を広く公開し, 一般市民に対しても平易な解説がなされるべきであろう。この場合, 大学や自然系博物館などの社会的役割が重要であるとともに, マスコミ関係者は, 客観的, 科学的な報道のあり方について十分配慮することも必要である。
- 1998-03-24