干出した長崎県諫早湾泥干潟で観察された貝類の多様性
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概要
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干出した諫早湾においてへい死した貝類の分布を調査し, 泥干潟の貝類を中心とした生態系を明らかにした.主な出現種はカワアイガイ等のウミニナ科の巻貝類や, イチョウシラトリガイ, ハイガイ等の内生型二枚貝類および付着性のマガキ・スミノエガキ等であり, その出現状況は堆積物の相違だけではなく干潟の幅によっても多様に変化する.泥干潟の生態系は, 構成種の時間的・空間的棲み分けによっても多様であり, 階層構造の形成により限られたスペースを高度に利用している.イチョウシラトリガイ等のデトリタス食の二枚貝は, ハイガイ等の濾水活動により強制沈降した浮遊物質や濃縮・排出された糞, 擬糞を二次的に利用している可能性もある.諫早湾の泥干潟で見られた種構成に類似する過去の貝類群集には, 中新世のArcid-Potamid fauna等が挙げられ, 生物の歴史的変遷の観点からの生息環境の評価についても今後十分検討が必要である.
- 2000-11-15