日本の第三紀砂鐵層中より見出された鐵の多いsaponiteについて("Lembergite"の再吟味)
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概要
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日本の第三紀砂鐵層及びそれに伴う凝灰岩中には, 色々の見掛けを有する緑色鑛物が見出される., その中で最も廣く分布する1緑色鑛物を, 筆者は1941年に詳細に研究した詰果, この鑛物は, 主として, 化學成分の上から, 古く(1887年)H. LEMBERGにより輝石の變成物質として記載された物質の中の1つに極めて近いことを見出し"lembergite"と名付け, X線的研究の結果より, この鑛物は, モンモリロナイトに屬する鑛物であろうと結論した., 最近(1948年)に筆者は, 宮城縣名取郡生出村茂庭の砂鐵層に伴う緑色礫灰岩中より既に分離したlemergiteの試料(1941年に使用したもの)より, 純粹に緑色鑛物のみを集めることに成功し, その性質を調べたところ, 豫想通りモンモリロナイト群に屬する鑛物であつて, しかも鐵の極めて多いsaponiteに一致することを見出した., その性質は次の通りである., 屈析率1.,56〜1.,58; 複屈析0.,02〜0.,03; 多色性, X: 緑色〜帶緑褐色, Z: 帶緑褐〜暗褐; SiO_2, 39.,68%; Al_2O_3, 3.,93%; Fe_2O_3, 19.,82%; FeO, 1.,12%; MgO, 11.,21%; CaO, 2.,37%; TiO_2, 0.,37%; MnO, 0.,19%; H_2O (+), 6.,16%; H_2O (-), 15.,11%; 計99.,66%., 同一試料であるにかかわらず, Fe_2O_3/FeOの比は, 1941年に, 3.,40, 1948年に7.,95に増している., よつて, 第一鐵の2次的の酸化が著しいと見て, 第二鐵の全量を第一鐵に換算して構造式を導いてみると, (Al_<0.,04>Fe_<1.,45>Mg_<1.,52>)(Si_<3.,62>Al_<0.,38>)O_<10>(OH)_2(Ca/2)_<0.,46>となり, saponiteのマグネシウムのほぼ半分を第一鐵で置換したもの, 即ち鐵の多いsaponiteに相當する., エチレングリコルで15.,7±0.,3kXの粒末線は16.,9kXに移る., いわゆる緑色凝灰岩中には緑泥石, セラドナイトなどと共にsaponiteもまた廣く存在する可能性がある.,
- 日本地質学会の論文
- 1954-01-25