某セメント工場老壮年者管理について : 高血圧管理の経過
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概要
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北九州某セメント工場の40才以上の職員及び臨時職員計105名に就いて精密に検査し行い、高血圧管理を行った。検査項目は諸発表を参考として施行したが全員に対し毎月の血圧測定の必要はなく、各季節に1回の測定が適当の様に思われる。心電図は6ケ月1回行ったが、要注意者は3ケ月1回行うべきと思う。眼底検査は1年1回行ったが、これも亦要注意者に就いては、3ケ月1回の検査が必要である。季節と血圧の関係は、当工場が温暖の地にある事と、冬期降下剤投与のためか、小田、三谷、伊佐等の言える如く冬期に亢進を認めなかった。従って今後も降下剤は管理区分に従って投与してゆく方針である。年令別に於ける高血圧者の状況は他工場と大差ない。併し56才以上の臨時職員に高血圧者が著しく多く見られたのはかって血圧管理を受けてない人が勤務しているからである。環境条件と高血圧の関係は、職場によって高血圧を多発する所はなかった。特に騒音作業場は実験的にも血圧上昇の一因となると云はれているが、高温作業場と共に有意の差をみなかった。又一般に塩分の過剰摂取、米の大食に高血圧者が多いと云はれているが、当工場の成績では大差がなかった。酒は毎日晩酌組に高血圧を多く認めたが、煙草は有意の差がなかった。又辛味を好む者、脂肪食を好む者に高血圧が多いと考え勝であるが、先人の報告同様大差はなかった。遺伝と高血圧の関係は両親が高血圧家系であれば73%、一方が高血圧家系であれば56%、両方正常家系であれば4%と宮尾の報告に近似し当工場でも高血圧家系に多く見られた。他覚所見で、X線像、心電図、眼底検査の有所見者がいづれも高血圧者に多いのは当然であるが、九州大学木村教授の大学外来を訪れた高血圧者の30%がX線像及び心電図に所見があったと云う報告に比べると遙に低率であった。[table]而し当工場の臨時職員は表20の如く普通職員に比べ遙に高率を示している。斯くの如く、工場の環境によって高血圧を促進する因はなく、私的環境によるものの如く解した。尚冬期血圧下降剤投与及び諸衛生教育により著しい有所見者の減少が認められた。(稿を終るに臨み御指導を賜った小倉市立病院長富田博士並に九歯大三枝博教授に哀心より感謝の意を表します。尚終始御協力を戴いた工場勤労課長及び同課諸兄に謹謝するとともに特に発表を許可して戴いた工場長に深謝致します。)
- 九州歯科学会の論文