Lyssa の発生学的研究
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概要
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雑犬(比較的類似系のもの)を胎生20日より略5日おきに生後15日まで採集しLyssaの発生を観察した。1.間葉期 胎生28日舌尖部から細長く約1.65mm後方に延ぶ略求心性に配列した間葉細胞の集密として発生。胎生30日前後径約2.72mmに伸長、前方及び後方部の横断像は28日例に酷似し、略求心性に配列した間葉細胞の小塊として現われるが、中央部辺においては不規則に配列す幼若な実質細胞群と、これを取巻く幼若な外輪走群とが見られるようになる。しかし両者の境は明でない。2.鞘及び筋形成期 胎生35日、前後径約4mmに発育伸長、輪走細胞群の外方のものは結合組織に分化し、即ち鞘を形成、胎生40日には輪走細胞群の内方のもの及び内部を満たす実質細胞群の一部は幼若な輪走筋に分化、胎生45日には輪走筋に取り巻かれていた実質細胞は既に縦走筋に分化す。従って筋系を容れたLyssaの概形が形成される。3.充実期並びに完成期 胎生50∿生後10日は拡大且つ充実期にしてLyssa自体の拡大及び後方部の伸長と両筋群(輪走筋及び縦走筋)の発育増加が目立っている。生後15日脂肪組織の発生を最後に各組織要素は更に充実し1年以降の成犬のものに酷似した構造を示すに至り、Lyssaはここに始めて完成す。かくの如くLyssaは間葉細胞の小塊に始まり、舌中隔を舌尖から後方に向って発育伸長するが間もなく外方の輪走細胞群と内方の実質細胞群とに分れ、更に輪走細胞群の外方のものは結合組織性の鞘に、実質細胞群の一部と輪走細胞群の内方のものは輪走筋群に、又内部実質細胞の大部分は縦走筋群に分化し、漸次形成されたもので、Wiederscheimのいえる如く舌軟骨の遺残とも解されず、Gegenbaurのいえる如くUnterzungeに起因するものでもなく、又Nusbaum及びMarkowski等の記載せる如く、舌発生時軟骨及び筋組織を包み、舌内に退化したものでもないことを解明した。
- 九州歯科学会の論文