ラットのリズム顎運動と開口反射との相互作用
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概要
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ケタミン軽麻酔ラットの咀嚼様リズム顎運動(RJM)と歯髓刺激による開口反射(JOR)との相互干渉作用について研究した.下顎切歯歯髓に刺入したステンレス双極針電極で開口反射を誘発し, 同側の三叉神経脊髄路尾側亜核(SpNc), 顎舌骨筋神経(Myl N)と対側大脳脚から電気活動を記録した.垂直顎運動を下顎切歯根部に接着したブローチを歪み計に接続して記録した.RJMの開始に先行して大脳脚ニューロン活動が起こり, RJM終了直後まで活動が持続した.最大の活動はRJM開始直後に見られた.JORはRJMの位相に依存して変調された.SpNcの一次求心線維活動の初期成分は後期咬合相から初期開口相にかけ促進, 後期開口相から初期咬合相にかけ次第に強く抑制された.痛覚成分と思われる後期成分はRJM中持続に抑制され, 大脳脚を介する皮質性シナプス前抑制によることが示唆された.Myl N反射活動は後期咬合相から開口終期まで促進, 後期開口相から初期咬合相まで抑制され, 主に脳幹のパタン発生器からの興奮性入力により, 中継核とは異なって変調されると考えられる.反射性開口運動はMyl Nの支配を受けるが, 解剖学的可動限界のため顎位にも左右され, 開口位で減少, 閉口位で増大した.一方RJMもJORにより変調され, 弱刺激による小JORはRJMを促進または開始させ, 強刺激による大JORはRJMを抑制し, 顎を開口位に固定した.中等度刺激によるJORはRJMを位相依存的に変調し, 開口相の直前から中期にかけ促進, 開口相から初期咬合相まで抑制した.抑制作用は閉口筋運動ニューロンの抑制によると考えられ, 歯髓求心神経も他の三叉神経感覚のように咀嚼運動に関与すると考えられる.
- 九州歯科学会の論文
- 1990-04-25
著者
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岩崎 誠
九州大学歯学部第二口腔外科学教室
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石塚 智
九州大学歯学部口腔生理学教室
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佐伯 和雄
九州大学歯学部口腔生理学教室
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太田 雅博
九州大学歯学部口腔生理学教室
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岩崎 誠
九州大学歯学部口腔外科学第2講座
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