イモリの歯牙の形態と血管分布について
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概要
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両棲類の歯牙の組織学的研究はHertwig (1874), Oltmanns ('51), Gillete ('55), ParsonsとWillams ('62), 浅谷('56)らによる報告がみられるが, その血管分布についてはわづかに波田('62)の記載をみるのみである.イモリは脊椎動物の中では比較的単純な血管分布を示すことが知られており, 更に歯牙の連続的発生が見られるので, 歯牙発生に伴なう血管分布の変化あるいは歯牙発生と血管分布事情の相関を知り得るであるう事は推測に難くない所であろう.本研究には30例のイモリを使用し, その半数は血管注入標本とし, 他の半数は無注入のまま, セロイジン連続切片, エポン切片として観察するか又は2例の注入標本と共に走査電顕の試料とした.大部分の注入標本は500μ連続透明切片として観察した.走査電顕試料は0.1∿1NのNaOHで処理し, 硬組織と血管, 又は硬組織のみとした.上下顎歯の主幹血管は内上, 下顎血管であり基底骨上を歯板に平行に走る類洞血管叢となり, これより, 多数の枝が歯胚に沿って完成歯に向かい, 各歯胚をとりまく洞様毛細血管網となる.完成歯では歯冠と歯台をとりまく深浅2層の網となる.浅層のものは外上, 下顎血管と連絡している.すなわち歯胚の発生とともにそれをとりまく毛細管網が出来, 歯胚の移動と共に移動, 歯足の完成とともに深層の毛細管網を形成し, 歯牙脱落とともに変性吸収されるものである.
- 九州歯科学会の論文
- 1972-05-31
著者
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林 宏文
九州大学歯学部第一口腔解剖学教室
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長谷川 一夫
First Department of Oral Anatomy, Faculty of Dentistry Kyushu University
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林 宏文
First Department of Oral Anatomy, Faculty of Dentistry Kyushu University
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石田 雅男
First Department of Oral Anatomy, Faculty of Dentistry Kyushu University