旋回浸漬条件下における鋳造用銀合金の溶出と細胞毒性について(in vitro)
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概要
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摩耗因子を負荷した動的条件下における市販鋳造用銀合金8材料の溶出挙動と細胞毒性の関係をしらべた.浸漬液はイオンや可溶性の錯体などとして存在するものと摩耗片や不溶性の沈澱物などとして存在するものを区別するために, 0.22μmのフィルターで濾過した.浸漬液中におけるAgの溶出量は各組成元素のうち最も大きな値を示した.また, 6合金からSnの溶出が認められた.一方, 4合金からInの溶出が認められた.Ag, SnおよびInの各元素は0.22μmのフィルターで濾過した後の濾液中には認められず, 摩耗片や腐食生成物などとして粒子状で存在していた.Znも浸漬液中に多量に溶出していた.また, その一部はイオンあるいは可溶性の錯体などとして濾液中にも存在した.Cuは2種類の合金において認められ, 主としてイオンあるいは可溶性の錯体などとして濾液中に存在した.浸漬液と濾液はともに強い細胞毒性を示した.とくに, 摩耗片などの粒子を含む浸漬液は, 0.22μmのフィルターを通過した濾液よりも強い細胞毒性を示した.1日間浸漬後の濾液において, 細胞毒性は各合金から溶出した可溶性のZn量に依存していた.今回の結果から, 動的条件下での合金の溶出は単なる静的条件下でのそれと明らかに異なっていた.今後, iv vitroで口腔内における合金の腐食ならびに細胞毒性を研究する場合には, 動的因子の負荷の重要性が示唆された.
- 日本歯科理工学会の論文
- 1989-05-25