リン酸カルシウム塩の添加が石こう硬化体の諸性質におよぼす影響
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概要
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石こうの機械的性質や表面粗さを改質することを目的として, 石こう結晶生成に有効な結晶核を添加し, これらより成長する石こう結晶が互いに結合, あるいはからみあいにより, より緻密な構造の硬化体を形成し, 石こうの機械的性質, 表面粗さを向上させることを期待した.本研究では, リン酸水素カルシウム(CHP), リン酸水素カルシウム二水和物(CHPD)および二水石こうを半水石こうに添加し, これら添加結晶が石こうの機械的性質, 表面粗さ, 硬化膨張および硬化反応に及ぼす影響を検討した.その結果, CHPDは石こうの圧縮および曲げ強さなどの機械的強度を向上させるのに有効であることが判明した.また, CHP添加では, 石こうの硬化時間は大幅に遅延するが, CHPD添加では, 逆に硬化時間は著しく短縮された.硬化膨張は, CHPおよびCHPD添加のいずれにおいても減少した.一方, 表面粗さも, CHPおよびCHPDのいずれの単独添加, ならびに混合添加において改善が認められた.以上の効果に関する機構, 原因究明のため, 二水石こうに対して過飽和な溶液を調製し, その溶液にCHPDを添加, 原子吸光分析にて経時的にカルシウム濃度の定量ならびに沈殿物についてフーリエ変換赤外分光, X線回折および電子線マイクロアナライザにて分析した.その結果, 二水石こうはCHPDを種結晶としてエピタキシーを起こし成長するのに対し, CHPにはそのような働きの全くないことが考えられた.すなわち, CHPDが石こう結晶生成に有効な結晶核となり, これを核として短い二水石こうが多数生成するとともに互いに結合またはからみ合いを起こし, より緻密な構造の硬化体を作り, 石こうの機械的性質と表面粗さが向上したものと考えられた.
- 日本歯科理工学会の論文
- 1990-03-25