コンポジットレジンの歯ブラシ摩耗に及ぼす組成の影響 : 特に, フィラーの粒度と含有量の影響
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
マトリックスレジン, フィラーの粒径および含有量を変えた各種試作コンポジットレジンを用いて, コンポジットレジンの耐摩耗性に及ぼす組成の影響を調べた.摩耗試験は当研究室で開発した歯ブラシ摩耗試験機で行った.3つのグループの加熱重合型コンポジットレジンを試験した.ひとつは, Bis-MPEPPまたはUDMAモノマーと, 平均粒径0.04, 1.9, 3.8, 4.3, 7.5, 13.8, 14.1μmの7種類のシリカフィラーのうちの1種から調製した系である.このグループでは, フィラー含有量を45wt%と一定にした.2番目のグループは, 粒径4.3μmのシリカフィラーを35〜75wt%の範囲で含有させた系である.3番目のグループは, ミクロフィラー(0.04μm)とマクロフィラー(4.3μm)を総量45wt%で含有させた系である.この系では, ミクロフィラーを5, 15, 25, 45wt%とマクロフィラーに置き換えた.これらの実験結果から, コンポジットレジンの耐摩耗性は無機質フィラーにより支配されており, 特にフィラーの粒径および含有量が決定因子であることが判明した.摩耗量はマトリックスレジンの相違によりほとんど変化しなかった.フィラーの平均粒径が約5μm以下になると, フィラー粒度が小さくなるに従って耐摩耗性が顕著に低下する傾向が認められた.粒径0.04または1.9μmのフィラーを配合したコンポジットレジンはフィラーを含有しないマトリックスレジンのみの試料に比較して耐摩耗性は低下した.しかし, ミクロフィラーもマクロフィラーと混合して用いることにより効果が認められた.ただ, ミクロフィラーの濃度の上昇とともに耐摩耗性は低下した.マクロフィラーを用いた場合, フィラー含有量の増量は, 明らかに耐摩耗性を改善させた.これらの結果および試料摩耗面のSEM観察から, 歯ブラシ摩耗は歯磨き剤中の研磨材が関与した三体摩耗であり, 研磨材の粒度とフィラー粒度の大小関係および研磨材の粒度とフィラーの粒子間距離の大小関係により影響されることが示唆された.
- 日本歯科理工学会の論文
- 1990-07-25