歯科応用のための熱可塑性形状記憶樹脂に関する基礎的研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
歯科領域において様々な新しい医用高分子材料が取り入れられてきており, さらに高機能性を有した高分子材料が求められてきている.近年, いくつかの高分子材料に形状記憶機能のあることが報告された.しかしながら, これらの高分子材料は形状記憶合金に比べ成形の容易さ, 着色が自由, 錆びない, 安価であるなどの利点を有するにもかかわらず歯科領域ではほとんど応用されていないのが現状である.そこで, 形状記憶効果を有する樹脂を歯科領域に応用するにあたり, まず種々の物性を知る必要がある.樹脂には, 数種のポリマーがあるが, その中の一つであるスチレン・ブタジエン共重合体SB系ハイブリッドポリマーを選択し, その機械的性質および熱的性質ならびに形状記憶効果について検討を行い以下の結論を得た.1.本樹脂は, 吸水はほとんど認められない疎水性の耐久性に優れる材料であると考えられる.2.本樹脂は, 粘りがあり, 柔らかい, すなわち剛性の小さい軟性レジンに属する材料であることがいえる.3.形状回復率は, 70℃以下では回復は鈍く, 温度が高くなる程, 速やかに回復が始まり, 80℃以上において, ほぼ元の寸法に回復する.牽引する力は, 延伸量に比例して大きくなる.4.熱を負荷することにより, 射出成型時の残留応力が解放され, 各温度とも負荷回数が増えるごとに変形量も多くなる.5.低温から熱膨張量は大きく, 68℃付近において最大膨張量を示し, 最大熱膨張率は0.42%であった.95℃を越すと軟化溶融状態になった.6.示差熱分析(DTA)の結果, 44℃付近に融解転移にもとずく吸熱ピークが認められ, 示差走査熱量(DSC)における顕著な相転移点と一致することから, 44℃付近に本樹脂の相転移点が存在する.7.フーリエ変換赤外分光分析(FT-IR)より, 本樹脂はポリスチレンが骨格分子をとり, 熱的性質はポリブタジエンが支配していることが推測された..
- 1992-03-25