増粘剤を添加した有機質溶解剤による新しい象牙質被着面処理ならびにボンディング材に関する研究
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概要
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本研究は, 象牙質被着面を酸処理後, 露出した象牙質コラーゲン層を有機質溶解剤で除去し, 得られた象牙質アパタイトの微細凹凸構造面に直接接着材を作用させ接着強化を図る方法を検討したものである.象牙質被着面処理剤は第一処理に3種の酸処理剤を用い, 第二処理には有機質溶解剤として10%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(NaOCl-Solution)とこれに増粘剤としてアルミナを8〜18wt%添加した10%次亜塩素酸ナトリウムゲル(NaOCl-Gel)を用いた.さらに, 市販ボンディング材とこれに助触媒であるベンゼンスルフィン酸ナトリウムを加え濃度を高めたボンディング材も試作した.その結果, 外側性歯面を想定して垂直にした被着面にNaOCl-Solutionで第二処理を60秒間行っても接着強さは3.6MPa以上得られなかった.これに対し, 増粘剤を14wt%添加したNaOCl-Gelで第二処理すれば10.6MPaの初期接着強さが得られた.またNaOCl-Gelは垂直にした被着面でもコラーゲン層を効率よく溶解除去することがSEMおよびFT-IR分析から解明され, コラーゲン層の溶解除去と接着強さには密接な関連のあることが判った.さらに, ベンゼンスルフィン酸ナトリウムを5wt%添加したボンディング材を用いた場合, 20, 000回のサーマルサイクリング試験においても8.1MPaの接着強さが維持され, 被着体破壊による接着低下も見られなかった.また, 本処理法を象牙質支台に用い, 辺縁漏洩を検討したところ無処理ならびに第一処理のみの場合と比較的し明らかに漏洩が抑制され, 優れた辺縁封鎖性を示した.以上の結果から, 40%リン酸とNaOCl-Gelを被着面処理に用いる本処理法は, 接着強さの向上と辺縁封鎖性に有用であることが判った.
- 日本歯科理工学会の論文
- 1993-03-25
著者
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