電子スピン共鳴法によるグラスアイオノマーセメントの硬化過程に関する研究
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概要
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電子スピン共鳴法(以下, ESRと略す)を応用し, Mn^<2+>をスピンプローブとして用い, 無荷重下で分子レベル的にグラスアイオノマーセメントの硬化過程を検索し, 硬化過程に影響を及ぼすと考えられる因子, すなわち, 粉液比, 環境温度, 練和時間, タンニンフッ化物合剤およびL-酒石酸の有無, 粉末粒子径について検討した.Mn^<2+>プローブをグラスアイオノマーセメントの液に加えた試料溶液とセメントの粉末を室温にて練和し, 練和開始2分30秒後から30秒間隔で, ESRを用いて遊離状態のMn^<2+>濃度を測定した.その結果, 粉液比が大きいほど, 環境温度が高いほど, 練和時間が短いほど, また粉末の粒子径が小さいほど硬化速度が速く, 硬化時間も短かくなることが明らかになった.タンニンフッ化物合剤は硬化過程および硬化時間に影響を与えなかったが, 酒石酸の場合, その添加量が増加するほど硬化速度が遅く, 硬化時間も長かった.しかしながらESRで求めた硬化時間は, いずれの粉液比, 環境温度においてもADA規格によって一定荷重下で測定した硬化時間よりも長かった.また, Mn^<2+>プローブの代わりに2, 2, 6, 6-tetramethyl piperidine-N-oxyl(TEMPO)をスピンプローブとして用いた場合の結果についても言及した.
- 1991-07-25