歯科鋳造用Ni-Cr系合金のNi溶出と電気化学的腐食挙動について
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概要
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Ni-Cr合金におけるCr量と添加元素であるMn, Si, Cu, およびMoが耐食性に与える影響を明らかにするために, Ni-Cr二元合金およびNi-5%CrとNi-20%Crの合金にMnを0.5および2.0wt%, Si, CuおよびMoを2.0, 5.0および10.0wt%をそれぞれ添加した三元合金を作製し, 37℃のリンゲル液および1%乳酸溶液に浸漬した場合のNi溶出量およびリンゲル液中における電気化学的腐食挙動を測定し, 次のような結論を得た.Ni-Cr二元合金は, リンゲル液中におけるNi溶出傾向によって, Cr量5.5wt%以下, Cr量10.8〜21.0wt%およびCr量26.3〜39.8wt%の合金の三種類のグループに分類することができた.リンゲル液中におけるNi-Cr二元合金からのNi溶出量および自然電極電位の測定において, Cr量5.5wt%と10.8wt%の間に耐食性の向上するCrの臨界濃度が認められた.しかし, 1%乳酸溶液中におけるNi溶出量およびリンゲル液中におけるアノード分極曲線の測定では, Cr量10.8%と15.7%wtの間にCrの臨界濃度が認められた.Mnを添加した合金では, 耐食性が低下したが, Siを添加した合金では耐食性が向上し, とくにSi量4.6wt%の合金は, 良い耐食性を示した.Cuを添加した合金では, リンゲル液中におけるNi溶出および自然電極電位の測定において耐食性が向上したが, アノード分極曲線の測定では, 耐孔食性の向上は認められなかった.Moを添加した合金では, 耐食性の向上が認められ, その最適添加量は, Cr量によって異なりCr量5.5wt%の場合にはMo量1.7wt%であり、Cr量21.0wt%の場合には7.1wt%であった.
- 1985-09-25