都市地域における公共交通機関の課題 : 熊本市電を事例として
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
今日, 自家用車の普及とそれにともなう都市構造の変化によって, 多くの都市で中心市街地の衰退が危惧されている。その活性化対策が求められる中で, さらに環境問題やバリアフリー対策への関心の高まりをうけて, 各地で路面電車をはじめとする公共交通機関見直しの議論が行われている。その際, 具体的な公共交通機関の見直し策を検討するにあたっては, 設備面や制度面だけではなく, 公共交通機関が実際にどのように利用され, 都市交通の中でどのように位置づけられているか, またどのような問題を抱えているのかを正しく理解しておく必要がある。本稿ではこのような視点から, 熊本市電を対象として, 輸送パターンの特色や都市交通の中における位置づけ, 沿線住民の利用状況や熊本市電に対する評価について調査・分析を行った。その結果, 熊本市電は, 買い物目的や余暇活動の目的を中心に, 比較的高頻度に広く活用されていることが明らかになった。しかし, 沿線住民の利用頻度や熊本市電に対する評価には地域差がみられるとともに, 他の交通機関との競合や連携不足が明らかになった。このような状況を考慮し, 熊本市電をはじめとする公共交通機関を維持し, さらに活用していくためには, さしあたって駅・停留所設備や輸送機材などのハード面と, 運賃制度や運行方法などのソフト面の両面から, 各交通機関の連携を強化することが必要であるといえよう。
- 2005-10-28