輸出指向開発再論 : 後発発展途上国の労働集約的工業発達の可能性
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概要
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東アジア経済は労働集約財輸出を中心とする輸出指向工業化によって経済発展を遂げた。その輸出指向工業化の成功の本質が、市場の歪みの小ささにあったのか、それとも政府の積極的な輸出促進政策にあったのか、という点については長く議論が闘わされてきたものの、世界銀行の『東アジアの軌跡』出版以来、後者の論理がより注目されてきた。 現在の低所得国は、その多くがWTOに加盟しており、かつて東アジア経済が採用したような輸出促進政策を採用できないことから、低所得国の製造業品の輸出成長は期待できないという新輸出悲観論が広がっている。その中でバングラデシュやカンボジアは手厚い政府の促進政策なしに、労働集約財の代表である縫製品の輸出を伸ばしている。そこで本稿は、WTO時代にあって手厚い政府介入が行われなかったとしても、低所得国が低賃金を活用して工業化を進める可能性が十分あることを主張する。