企業統治と経営者の裁量について
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概要
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バブル経済崩壊後、日本的経営は著しく評価を失った。それはミクロ的な視点からだけでなく、マクロ的な点からも多くの批判を受けており、もはや21世紀においては陳腐化し有効性はないものと裁断されている。資本主義経済でありながら日本の経営者は株主からの受託責任を果たしておらず、資本の著しい毀損すらもたらしている。にもかかわらず経営者は株式の相互持合構造によりその地位を保持している。こうしたことから企業統治の構造を改革し、企業ひいては経済社会の改革を進めるべきであると強い主張がなされ、改革が遂行されつつある。本稿はこうした主張については一定の評価をするものではあるが、日本的システムのすべてを否定することには批判するものである。その基本認識は各国経済・企業システムはその環境との関係で形成されてきたものであり、各システムは伝統的な文化・社会的な独自性と親和性を持っているとの理解からである。企業・経済の発展にはシステムの機能分化を進める必要があるが、企業に関しては所有と経営の分化を進め経営者の裁量権を拡張することが肝要であると主張している。その経営者の機会主義を規律することは最終的には経営者の人間性それも各国独自の文化・社会的な価値意識に依存するものであると考えている。経営者の役割は単に個別企業の利潤最大化を実現することでなく、環境との関係から目的を戦略的に利用し、複数の目的を同時に実現しなければならない制約のもとにあるとしている。こうした目的のためには新たな革新の努力を通じた付加価値の拡大を目指し、相対的な分配率の安定を経営者のもとで遂行することが要諦であると主張している。本稿では企業統治の具体的なシステムは考察していない。
- 2003-12-30