特別養護老人ホームの立地と入所先選択をめぐる現実と理想的条件 : 岐阜県東濃老人保健福祉圏域を事例として
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本稿では,特別養護老人ホームの施設選択をめぐる選好と実際の入所行動とのギャップをアンケート調査から解明し,そこから施設立地のあり方に関する一つの価値基準を提示することを目的とした。研究対象の岐阜県東濃老人保健福祉圏域における特別養護老人ホームに関する入所先の選択要因を見ると,家庭での介護力の限界などに起因する早期の入所達成に対する緊急的必要性や精神的逼迫によって,考慮する選択項目がより受動的になりがちであった。これに対して,回答者による将来の理想的な入所選択のあり方を見ると,施設のソフト・ハード両面に渡る入所後の生活の質に直結する側面を十分に考慮した姿勢が明確であった。このような施設選択をめぐる理想的選好と実際の入所行動とのギャップは,施設に関する情報の少なさや,依然として慢性的に不足する施設のベッド数と,多くの待機者数や待機期間の長さとして現れる需給のアンバランスに起因している。しかし,理想と現実の狭間にありながらも空間的近接性に関する志向は一貫して重要な条件として捉えられていることが明らかとなった。この点をふまえると,施設のサービス提供能力を新規立地という方法によって劇的に増加させることが財政的制約ゆえに現実的でない以上は,施設の立地配分に関して現行の市町村の枠組みを基礎とした格差緩和に向けた政策的配慮の必要性が指摘てきよう。
- 地理科学学会の論文
- 2004-01-28
著者
関連論文
- 介護保険制度施行以後の介護老人福祉施設の整備状況
- 介護保険制度による事業者間競合とサービス事業の展開 : 石川県穴水町の訪問介護を事例として
- 合併による旧市町村間の介護保険事業に関する地域的差異
- 特別養護老人ホームの立地と入所先選択をめぐる現実と理想的条件 : 岐阜県東濃老人保健福祉圏域を事例として
- 介護保険制度下の高齢者福祉サービスに関する地理学的研究課題
- 高齢者福祉改革と施設設備の地域格差
- 合併地域における介護保険の事業特性に関する旧市町村間の差異 : 「介護保険事業状況報告」による保険者別データの比較から