十五年戦争期の米倉二郎
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概要
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十五年戦争期における米倉二郎の地理学研究には, 研究対象および研究視角において小川琢治の影響が読みとれる。たとえば, 土地区画・集落立地・軍事地理・地理学史などについて中国のそれを視野に入れて研究した点で共通しており, 地政学研究についても小川の論著から刺激を受けるところが多かった。このように米倉は小川の着手した諸研究を継承し発展させたといえるが, なかでも条里制の研究は, その後の日本における歴史地理学研究の方向を決定づけるほどの甚大な影響力をもった。米倉の知的体系を特色づけるのは, 東アジア世界の一体的な把握であり, この世界の歴史的連関を念頭におきつつ地理的諸事象が考究された。そのなかでも行政計画への関心が強く, 村落計画としての条里制, 計画都市としての国府, 行政区画, 産業立地を中心とする国土(地域)計画, 農業植民をともなう集落計画などが継続的に考究された。このような研究志向から「大東亜新秋序」という壮大な一種の行政計画の研究に向かった彼は, 明確な課題意識をもって「大東亜」各地の地域性を鮮明に描くとともに, 具体性に富んだ論策を数多く提示するに至ったと考えられる。
- 1998-04-28