大都市港湾とその関係圏 : 大阪湾を事例として
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概要
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拙稿(峯, 1995)では, 地方小商業港である下関港を事例として, その後背地のミクロな構造を分析した。しかし, 中央の大港湾においては, 各港の他地域に及ぼす影響が大きく, また港湾背後にはより複雑な物流が存在していると考えられる。本研究は, その例として大阪湾を取り上げ, 港湾の影響が及ぶ地域である「港湾関係圏」の構造を明らかにしようとしたものである。これまで、物流の複雑化する現代の港湾, 特に工業港は「関係圏」によって捉えることが難しくなったとされてきたが, 本稿では, 海上や陸上の物流のネットワークを分析することによって, 「前方地」や「2次的後背地」などから「関係圏」を新しく考察できることをみた。また専用埠頭をもつ工業港の事業所は, 原材料の搬入や製品の国内他港への海上輸送の場合には自港の専用埠頭を利用する傾向がある。これに対し, 製品の輸出では専用埠頭の有無を問わず大阪港や神戸港などの大商業港を利用することがわかった。この事実から, 大商業港がもつ海上ネットワークの充実度が商業港の「関係圏」を拡大していることや商業港と工業港間の機能分担の関係も明らかとなる。