ヒラヤマ山麓の地形と中ヒマラヤの氷河地形
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概要
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筆者は北西ヒマラヤのカングラ盆地の地形発達史,および盆地北部に位置する中ヒマラヤの一つ,ダウラダール山脈の氷河地形について調査し,特に山麓に広く分布する巨礫層の成因について考察を加えた。本地域の地形面は六つに分類され,高位の三つの地形面は,巨礫層からなる堆積面であることが明らかになった。最高位のダラムサラ面は最も古く,二番目のパランプール面と同様,無層理の巨礫層からなり,土石流,泥流の営力によってダウラダールからもたらされたものと考えられる。三番目のカングラ面は,本地域に最も良く発達し,巨礫層には層理がみられ,流水の営力と考えられ,氷期のaccumulation terraceに対比した。パランプール面の上部には,レス状堆積物がみられ,氷期に形成されたと考えることができる。パランプール面とカングラ面の形成期の間には,明らかな侵食期が.認められ,パランプール面のレス上部に,赤色土壌が形成された。これらの地形形成の年代を示す証拠は見つからなかったが,三つの巨礫層は,それぞれ氷期の堆積面と考えられる。カングラ面形成以来,これらの地形面は基準面の変化によって開析をうけ,さらに低位段丘I,II,IIIが形成された。カングラ面形成以後のシワリク丘陵の隆起は80mにも達する。ダウラダール山脈には,二群の氷食圏谷がみられ,その圏谷底の高さは,高位のもので4,200m,低位のものは3,200mであり,それぞれ二回の氷食期の存在を示す。さらに,3,800mの高度に谷氷河のモレーンがみられ,また2,800mの所にも断片的なモレーン稚積物がみられ,やはり二回の氷期を示す。ダウラダールの氷河が山麓のカングラ盆地にまで拡大した事実はないが,氷期には巨礫の生産が多く,巨礫層の形成に大きな影響を与えた。本地域の地形発達史,および北西ヒマラヤの他地域の発達史との対比を第3表に示す。
- 地理科学学会の論文
- 1975-01-20