イタリアにおける経営学
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概要
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企業の経営に関する研究はきわめてふるくより行われてはきたが、それが近代科学としての形を次第にそなえるに至ったのは前世紀末ないし今世紀初頭のことであった。そのご資本主義の高度化にともなう巨大企業の実践的要求にこたえるために、経営学は急激な展開をとげ、とくに具体的・技術的研究における内容の充実はまことにめざましいものがある。ところが、とくにわが国の場合、これらの多彩豊富な成果をたんなる断片に終らすことなく統一的理論体系の中に組み入れ、それによりさらに将来の展開方向に対する見通しをえるための、基礎的反省は現在までははなはだ不充分な状態のまま放置されてきたといわざるを得ない。これはわが国の経済的なたちおくれを是正するための一つの手段として、あるいはアメリカの経営管理論Business Administrationからあるいはドイツの経営経済学Betriebswirts chaftslehreから、急速に業績の「移植」を試みなければならなかったという特殊事情を考慮すれば、当初はある程度やむをえなかったともいえるが、今日では、そのような反省をぬきにしては、これ以上の理論的発展に大きな支障をきたすような段階にきているのではなかろうか。理論はそれが理論として高まるほど、また実践にも大きく役だつといわれる。それゆえ、われわれの直面している現実的課題の解決にとってもこれはきわめて重要である。このようにして、ふるくは複式簿記の始祖ルカ・パチョロLucaPacioloを生み、また近代的経営学の分野でも大きな貢献をしてきたイタリアの事例の検討は、わが同様第二次大戦後はアメリカ経営学の波に洗われているという事情もあり、われわれにとってもきわめて興味あるものとなる。註(1)この間の事情は、たとえば、池内信行、現代経営理論の反省、昭和三十三年等を参照のこと。(2)パチョロはフランチェスコ派の修道僧であり、一四九四年にヴェネチァで刊行されたその著、Summa de Arithmetica, Geometria, Proportioni et Proportionalitaは複式簿記についての最初の記述を含んでいる。
- イタリア学会の論文
- 1961-01-30
著者
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