「タッソーの劇作品Amintaについて」
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概要
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このAmintaが完成した時Torquato Tasso(1544-95)は年二十九歳であった。当時TassoはAlfonso IIの宮廷にあって不朽の傑作Gersalemme Liberataの詩作に余念がなかったが、宮廷劇として流行した牧人劇の事が念頭を去らなかった。そして一五七三年一月、公の許可を経て僅か二カ月で脱稿し一五七三年七月三十一日Belvedere離宮に於てAlfonso II公、枢機卿Luigi d'Esteの臨席の下に上演、大喝采を浴び以後各地で上演され熱狂的な歓迎を受けたのがこのAmintaなのである。このAmintaを評しP.A.Serassiは「全ての点で優美神韻漂える完璧な作品であり、イタリア詩の有する珠玉の一つである」と云い、又G.Carducciは「全く霊妙極まりなき均斉美を持てる芸術作品である」と絶讃しているのである。併しここで我々が考えるのはTorquato Tassoと云えば、かの聖詩Gersalemme Liberataが念頭に泛ぶのであってAmintaとは考えられないのである。果してAmintaは傑作であっても、彼Torquato Tassoにとっては二義的な意義しか持たなかったのではなかろうか、又TassoはこのAmintaに於て何を意図したのであろうか、私はこの二点について究明せんがために、俗諺「或る一冊の書物は三度読まねばならぬ、一回目はその全てに何が書かれてあるか、二回目は何を云っているかを知るために、三回目は友情的敵意を以て」の線に沿ってこの論を進めて行きたいと思う。便宜上本論を三章に分ちI Amintaに於ける人間像 II Romantic fantasy III Amintaの本質と題し、後結論を述べたい。
- イタリア学会の論文
- 1959-12-30