イタリア文献学研究の諸問題
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概要
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文献学の研究方法はイタリアの文学批評のなかにあつて最も伝統に輝く一分野である。それでいながら従来は他の欧洲諸国の文献学の潮流のかげにとどまつて、わが国では殆んど注目されることが少なかつたように思われる。それでこの論文の紹介によつて、近釆のイタリア文献学研究の方向や焦点が多少なりとも明らかにされればと考えて訳出したのである。それから又、ミケレ・バルビの『新文献学』の後継者として、現在広く知られている著者の、新しい批評的立場がどのようなものであるかを窺い知ろうと願つたからでもあり、それは、同じ著者の論文『商人の叙事誌』(イタリア学会誌六号に訳出)の、言わば方法論的なうらがきを見るという意味に於いても有益ではないかと信ずる。翻訳のテキストはブランカ教授より送られたプリント(最近Vittore Branca "Tradizione delle opere di Giovanni Boccaccio" Ediz.di "Storia e Letteratura", Roma 1958の序文として発表された)に拠り、末尾の註釈は訳者の質問に応えて直接教授の手で附加されたものである。ここにブランカ教授のご好意に深く謝意を表したい。
- 1958-12-30