《Biblioteca di storia agraria medievale》diretta da Bruno Andreolli, Vito Fumagalli e Massimo Montanari, Bologna, 1983〜1991.
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概要
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中世イタリア社会の解明には、政治史、国制史、都市史、商人・商業史、思想史、文化史などの多様で豊かな実りを参照することができる。とりわけ近年の日本の中世イタリア史研究においては、中世盛期以降の都市と周辺領域を対象に取り上げたものが以前にもまして多いのが注目される。ただし、中世初期から紀元千年前後のイタリア社会への関心は、なお高いとはいえないように思う。そこでここでは、8〜9世紀にカロリング国家の一部をなし、カロリング家系の断絶後イタリア王位が争われる混乱を経て、ドイツ皇帝権が到来する時期を主たる対象として、中・北部イタリアについての最近の研究を紹介したい。中でも、従来日本の中世イタリア史では看過されがちであった農村史研究に目を向けてみたい。もちろん、ここでイタリア学界の動向紹介を試みるのは、単にわが国で知られるところが少ないからという理由だけによるのではない。中世初期、盛期にかけての農村構造と、都市=農村関係の解明という問題に対する関心は、イタリアでのみならずヨーロッパ全体の研究者によって広く共有され、特に1970年代以降、研究が進展している点で注目すべきものだからである。とりわけ経済的停滞と社会的混乱の局面のみが強調されてきた中世初期に関しては、この時期の直線的ではないにしろ持続的な経済成長がヨーロッパ全体で重要視されている。イタリアでは特にボローニャ大学の研究者たちが、中世初期、盛期の中・北部を取り上げ、その成果を世に問うている。ここではその研究状況を最もよく表す、ボローニャ大学のB.アンドレオッリ、V.フマガッリ、M.モンタナーリを監修者とする『中世農村史叢書』《Biblioteca di storia agraria medievale》(BSAM)とそれに刊行された研究書を取り上げ、紹介したい。1983年のアンドレオッリとモンタナーリによる、L'azienda curtense in Italia. Proprieta della terra e lavoro contadino nei secoli VIII-XI([1])の刊行以来、1991年までに『中世農村史叢書』は全部で8冊を数えている。その中で、中世初期、盛期に焦点を絞ったものは以下の5冊である。[2]Andreolli, B., Fumagalli, V., Montanari, M.(a cura di), Le campagne italiane prina e dopo il Mille. Una societa in trasformazione, 1985. [3]AA.VV., Le prestazioni d'opera nelle campagne italiane del Medioevo. IX Convegno storico di Bagni di Lucca, 1987. [4]Andreolli, B., Montanari, M.(acura di), Il bosco nel Medioevo, 1988. [5]Pini, A.I., Vite e vino nel Medioevo, 1989. [6]Lagazzi, L., Segni sulla terra. Determinazione dei confini e percezione dello spazio nell'alto Medioevo, 1991. 中世初期イタリアの社会経済史を農村の側からいかに捉えるかという姿勢が明確に打ち出されている点では、やはり[1]の『イタリアの荘園制。8-11世紀の土地所有と農民労働』が注目される。本書ではその後取り上げられるようになる諸問題が既に網羅されているので、ここではまずこの研究書を中心に、ボローニャ学派による中世農村社会像をたどりたい。
- 1994-10-20