学校教師の地理的流動 : 15世紀ヴェネツィアの場合
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概要
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本稿は, 中世都市に出現し私的に教育に従事した教師達の実体を様々の角度から明らかにすることによってその全体像に迫ろうとする試みの一環である.教師というものの全体像を, 諸種の位相を通じて明らかにするトポロジカルな研究としては, 経済的位相, 社会的位相, 精神的位相などの位相が対象として考えられるが, 中世社会においては地理的位相も重要となる.なぜならば, 中世都市社会における教師達はその多くが放浪する者達であったからである.彼らは, 15世紀の中世都市では一般的に「学校教師」rector scholarumと総称されるようになっていたが, 決して現代的な意味での学校教師ではなかった.「顧客」である生徒を自ら獲得して学校を開いた私的な学校教師, いわば私塾の教師達であった.その収入は生徒から個人的に獲得される授業料に依存していたから, 彼らは教育需要のある所を求めて, 国から地域へ, 地域から都市へ, そして都市の内部から内部へと移動した.従って, 彼らが何処から来て, 何処に住んだかといった事実はその都市の教育のあり方を反映しているし, 逆に都市の教育に影響を与えもしたのである.本稿はこれら教師達の地理的流動を, 15世紀前半のヴェネツィアに対象を絞って, 社会的, 経済的, 政治的な都市空間の構造の側面から解明し, 中世都市の教育政策との関連を考究するための手がかりを得ることを目的とする.
- 1986-10-30
著者
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